もし、管制官だったら

さてこの状況で、高度約3万8千フィートを上昇中の「CRK693」便が、与圧トラブルのため緊急降下すると伝えてきました。あなたは管制官、どう誘導しますか?

  1. 先行機「ESR624」は約50km(27nm)前方下を高度約2万8千フィートで飛行しています。「CRK693」をこのまま緊急降下させると先行機に接近するので、進路を左右どちらかに振る指示を出したいところ。緊急事態で何が起きるか分からないので、陸地から離れる「右」は止めて「左」にします。
  2. でも「CRK693」の左後方には、青森空港を離陸して高度約2万8千フィートに上昇中の「JAL148」がいます。大きく左旋回を指示すると接近するので、「CRK693」の機首をちょっとだけ左に向けてもらいましょう。陸上に入るときは鳥海山(標高2,236メートル、約7,400フィート)にも注意しなきゃ。
  3. おっと、対向してくる「APJ109」と「GLF5」の2機が心配です。幸い「GLF5」は約4万3千フィートの高い高度を飛行しているので気にしなくてよさそう。「APJ109」は約3万7千フィートなので、「CRK693」がすぐに降下開始すれば「APJ109」の下にもぐって十分な高度差を確保できそうです。
  4. 「JJP186」と「AFR274」は100km(50nm)以上も先行していますから、接近する心配はないですね。念のため、高度はどちらもFL360(約3万6千フィート)です。

このとき担当していた管制官がこんなことを考えたかどうか分かりませんが、「CRK693」が緊急降下した約7分後(高度10,000フィートでレベルオフ)、周辺のトラフィックはこんな状況になっていました。当然ですが、懸念要素は全てクリア! そんなに難しい問題ではなかった?

  • CRK693 : Hong Kong Airlines 693
  • ESR624 : Easter Jet 624
  • JAL148 : Japan Airlines 148
  • APJ109 : Peach Aviation 109
  • GLF5 : Gulfstream V
  • JJP186 : Jetstar Japan 186
  • AFR274 : Air France 274

与圧トラブル

9月4日の夕方、現実にこんな状況が発生していました。新千歳から香港行きの香港航空693便(CRK693、またはHX693)のエアバスA330(機体記号:B-LNT)機が秋田県上空を上昇中、機内の気圧を保つ装置のトラブルで緊急降下を行いました。次の図のとおり、約7分間で2万8千フィートほど降下したので毎分約4,000フィートの降下率だったことになります。

緊急降下って、どれぐらいの急降下なのかな? 4年前、ANAのボーイング787型機が、リチウム・イオン・バッテリーから発火して高松空港に緊急着陸したことがありました。運輸安全委員会の報告書によれば、一時的に毎分約7,000フィートの降下率だったとのこと。操縦室の計器に異常が表れ、焦げくさい臭いがすれば、すぐにでも機体火災に進行するかもしれません。最短の時間で着陸し乗客を脱出させるためにとった、非常に大きな降下率での緊急降下でした。今回「CRK693」の-4,000ft/minも大きな降下率だと思います。

その後「CRK693」は高度1万フィートを維持して新千歳空港に引き返し、無事着陸しました。報道によれば、酸素マスクはドロップしなかった(させなかった)とのこと。ということは「急減圧」ではなかったんでしょう。後で、エアコンユニットの不具合だったと聞きましたので、上昇するにつれて徐々に与圧しきれなくなった…のかもしれません。

8月12日の与圧トラブルで「33回忌の気圧低下」という記事にしましたが、この9月4日、減圧事案ふたたび発生です。また、翌5日には、羽田から離陸したボーイング777の左エンジンが損傷し、引き返して緊急着陸しました。火が出たシーンが繰り返し放映され、報道がやや加熱ぎみのようです。

たとえマベリックの操縦であっても、これら事案の運航乗務員や管制官のように、いかなるときも冷静に、客観的に状況を判断して、的確な対処ができるようになりたいものです。

※ 図はいずれも「Flightradar24」を使用させていただきました。一部加筆しています。

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