33回忌の気圧低下

8月12日夕方、東京羽田→大阪伊丹 ANA37便で与圧システムに不具合が発生し、羽田に引き返しました。特別に騒ぎ立てるほどのトラブルではなさそうですが、ニュースで着陸の映像や酸素マスクが下りた客室写真が報道されていました。

今年2017年はJAL123便の御巣鷹墜落事故から32年目、仏教なら33回忌です。路線も出発時刻もJAL123便と同じ、さらに与圧にからむ事案ということで、SNSなどでは「共通点が多い」と話題になっているようです。マベリックには縁のない話なんですが、ちょっとヤジ馬的に見てみることにします。

いつ? どこ?

ANA37便の飛行航跡は「Flightradar24」で出てきました。飛行高度のグラフから、18時31分ごろ高度15,000フィートを超えて上昇中でしたが、約10,000フィートまで緊急降下(毎分2,000~3,000フィート)したように見えます。パイロットの認知、判断、対処などに要する時間を考えると、与圧システム不具合のWARNING(またはCAUTION)が発生したのは18時30分ごろか、それ以前だろうと思います。

場所は三浦半島を通過した付近だったようです。夕刻だったので房総半島には羽田に着陸しようとする航空機が並んでいましたが、ANA37の周辺は幸い交通量が少なく、緊急降下に支障はなかったでしょう。

緊急降下

高度15,000フィートは約4,600メートル、世界最高峰エベレストなら5合目付近ですが、富士山頂よりはずっと高い高度です。デコンプ(decompression、機内の気圧低下)が起きると一刻も早く支障のない空気密度の高度まで降下しなければなりません。パイロットは管制官に緊急降下を宣言し、降下の許可を待つことなくTCASで自機周辺の航空機を確認して富士山に近付かない方向へ、まず13,000フィート(約4,000メートル、富士山より高いところ)までは地形の心配をせず降下したでしょう。

機長と副操縦士はすぐに酸素マスクを装着したはずです。酸素が不足する状態になっても体感しにくく、脳が低酸素になると判断能力が鈍ると言われています。ANA37便は高度約10,000フィートでレベルオフしましたが、与圧なしでこの高度に長くいると、人によっては頭痛などを引き起こすことがあります。報道によれば、客室の酸素マスクはパイロットの操作でドロップさせたとのこと。マスクが自動落下したのでないなら、急な、あるいは大きな減圧ではなかったんでしょう。念のためのマスクドロップ手動操作だったのかもしれませんね。航空局が「航空機内の気圧の異常な低下」と判断すると重大インシデントに該当するので、運輸安全委員会が調査することになりますが、16日時点でその動きはなさそうです。

ちなみに、パイロットは酸素マスクを装着しても通常どおり無線通信ができるようになっています。こもったような声で少し聞き取りにくくなりますが…。

エマー(Emergency)宣言

「Flightradar24」によれば、緊急事態を表すATCコード、スクォーク「7700」が出されたようです。ANAの発表で「航空管制上の優先権を要請のうえ」というのは、緊急事態を宣言したことを意味しているのでしょう。管制官の方から「緊急事態を宣言しますか?」とパイロットに確認することもあります。

さほど多くはない共通点

全日空37便のATB(Air Turn Back)事案、同社が調べたところ「車輪の格納スペースにある空気ダクトの一部が破損していた」ことが分かったとのこと。破損の程度は報道からは分かりませんが、機内の圧力がわずかずつ低下する程度だったのかも。もともと、与圧コントロールのための圧力調整バルブがありますが、その開閉だけでは制御しきれなくなったのかもしれません。

いずれにしろ、後部与圧隔壁が破壊したJAL123便事故とは状況がかなり異なりますが、搭乗していた方々はマスク・ドロップに驚き、着陸するまでは不安だったことでしょう。ともあれ、ご無事で何より。

コメント

  1. イカゴロ より:

    もしかして、緊急事態”7700″にセットされているアイキャチ写真のKING製トラポンは、JAL123便事故機のものでしょうか?

    • やぶ悟空 より:

      トラポンは苫小牧科学センターのヘリのものです。ANAが16日に発表した「特別なお知らせ」によれば、「客室内の気圧が緩やかに低下した」という説明でした。

  2. 清水 より:

    いつも知的な情報興味深く拝見しています!

    • やぶ悟空 より:

      隙間だらけで与圧なしのマベリックには関係ないんですが、緊急時の心構えは同じように持っていたいと思います。

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