許可書を読み解く

7月の三連休、土曜日は風が悪く、日曜と月曜(祝)は雨で飛べないという残念な状況でした。そこで自習に切り換え、いわゆる28条の「許可書」をじっくり読んで、疑問点を分かる範囲で調べてみました。

マベリックは超軽量動力機なので、飛行するには「3つの許可」が必要です。(出典:航空局ホームページ

  1. 機体 …機体の安全性等の確認(航空法第11条第1項ただし書の許可)
  2. 操縦 …操縦者の技量等の確認(航空法第28条第3項の許可)
  3. 場所 …飛行場以外の場所での離着陸の安全性の確認(航空法第79条ただし書の許可)

これら3点セットのうち、今回は 2.の操縦者に関する許可について考えてみます。

航空法第28条第3項の「許可書」の別添「許可条件等」には、この記述がありました。
第1段階の許可を受けた私は、この内容を正しく読み解かなければなりません。

「場周空域」とは

最初の疑問は「場周空域」って、どこ? 答えは航空局の通達「超軽量動力機等に関する航空法第28条第3項の許可の手続き等について」にありました。この通達は20年以上前(H8.10.1)に制定され、一部改正を繰り返して現在はH19.9.3に改訂された国空乗第263号が最新版のようです。この「3.定義」の項に、「場周空域」は「飛行場又は場外離着陸場を中心として原則半径3キロメートル以内の空域」とされています。

白老滑空場は場外離着陸場に該当します。そこを使用する白老フライングクラブに限って言えば、「場周空域」とは白老滑空場の滑走路中心から半径3km以内の空域のこと、となります。通常よく使われる似た言葉に「場周経路(トラフィック・パターン)」というのがありますが、それとは意味が違います。他の条件を満たしていれば場周経路から外れてもかまわない、ということですね。

「人」「人家」「物件」

「人」や、人の住む家「人家」の上空の飛行を避ける、これは了解です。白老滑空場周辺に多い家畜小屋(牛舎など)は「物件」でしょうから、その上空も飛行しないことにします。では、道路は? 道路も「物件」のように思います。道路を走行する自動車は「物件」に該当するでしょうからその上空は避けるとして、道路をまったく横切らずに飛ぶことは、半径3km以内と限定しても我が国ではほぼ不可能でしょうね。

三省堂大辞林によれば、「物件」とは「物品。品物。物品などの動産のほか、土地・建物などの不動産についてもいう。」とされており、他の辞書でも「物件」には「不動産」が含まれています。道路のみならず土地までもが「物件」だとすると、その「上空を除く」ことはまったく現実的ではありません。

さらに、白老フライングクラブでは「高速道路の上空」は飛行禁止区域と考え、半径3km以内の場周空域であっても道央自動車道を越えて飛行することはありません。しかし「高速道路の上空」を「飛行禁止区域」と定めているのは、半径3kmから9kmに拡げるための「空域拡大に関する要件等」という別添文書(11~14ページ)です。白老フライングクラブでは空域拡大をしていないので、この要件は無関係なハズです。

ということは、半径3km以内なら高速道路を越えて飛行してもいいのかな? もしや、許可書の許可条件に記載されている「物件の上空を除く」の「物件」に、一般道は含まれないが高速道路は含まれる、という解釈なのでしょうか?

そんなこんなの曖昧さがあるために、冒頭に「原則として」という都合のいい言葉を書いてあるんでしょうね。でも、どんなときにこの「原則」が効いてくるのか、明確にしてもらう必要がありますね。少なくとも何らかの例示などは必要でしょう。

「離着陸の訓練のための飛行」

逆に言えば、「離着陸の訓練のため」でない飛行はダメ、となりますね。一般にまったくの初心者は、直線飛行や旋回などの基本的なエア・ワークから始める必要があると思います。そのような基本的な飛行ができないと離着陸もできませんから「離着陸の訓練のための飛行」にこれらのエア・ワークも含まれると考えていいんでしょうね?

でも、どこまでが「離着陸の訓練のための飛行」なのか、よく分かりませんね。フォワード・スリップやパワー・オフ着陸、失速の訓練なども第1段階で実施していいんでしょうか?

「ジャンプ飛行」

ジャンプ飛行については※で説明されています。「同乗又は地上監督の下に行う」ということは、2人乗り(複座)のマベリックでも訓練生単独でジャンプ飛行ができる、と読めますね。「又は」でつないでいるのは、たぶん単座機によるジャンプ飛行訓練を想定したものでしょうね。せっかく複座のマベリックなので、1人ジャンプする必要はありませんが…。

ジャンプ飛行は、停止状態から加速→高速滑走→浮揚→低高度での水平飛行→着陸操作→接地→着陸滑走→減速→停止と、滑走路内で短時間に離陸から着陸までの要素を詰め込んでいるので、実際にやってみて非常に難しい訓練だと実感しています。これを第1段階の初心者の訓練として行うことは、はたして適切なのかな~?

「管制区」「管制圏」

これって場所どこ? その違いは何なの? 正しくは「航空交通管制区」「航空交通管制圏」だそうで、航空法ではいずれも「国土交通大臣が告示で指定する」となっています。(その告示は文字ばかりの表現で分かりにくいため省略。こちらで検索できます。)

「管制圏」は、通常、飛行場の標点から半径9kmの円内ですから、最寄りの新千歳空港・千歳飛行場から40km以上離れている白老滑空場では「管制圏」を意識する必要はないでしょう。

一方の「管制区」、白老では十分な注意が必要です。AIP(航空路誌)に管制区の図が示されています。

これは、白老周辺を拡大(一部加筆)した「管制区」の図です。白老滑空場のあたりは、新千歳空港、千歳飛行場、丘珠飛行場を中心とする赤色の範囲に入っています。赤色は高度300m(1000ft)以上の空域を意味しますから、白老滑空場の上空1000フィート以上は「管制区」になっているんですね。

また、千歳飛行場・新千歳空港は複雑な進入管制区などが設定され、折々に変更されます。いずれにしろ、白老滑空場から半径3km以内の場周空域では、高度1000フィート以上は飛行できないことになります。(詳しくは「飛行エリア」を参照して下さい。)

この「管制区」の図を見つけ出すのは容易ではありません(入手方法は下欄を参照)。Google検索ではヒットしないようです。航空局が航空法第28条第3項の許可書を発行するときに、AIPに掲載されているこの図を添付してくれると嬉しいのですが…。

まとめ

このように、許可書1枚を読み解くのもかなりの労力を要し、それでもはっきりしない部分がいくつも残りました。また、ここに掲げた以外に、告示、通達の内容や表現の不一致など、多くの疑問も出てきました。

「第1段階の飛行」の許可を取ろうとする人は、航空には素人である方が多いはずです。飛行が許可される範囲はどこまでか、高度は何フィートまでか…などの肝心なことを、操縦訓練生が分かりやすいように、許可証の記述などに工夫が必要でしょう。何が良くて何がいけないのかを具体的に操縦者に伝えないと、「許可書にはっきり書いてないし、いいんじゃないの?」などと独自の解釈をされないとも限りません。疑問があれば操縦者自らが調べ、それでも分からないときは所管の行政機関に問い合わせるのが本来の姿でしょうが、航空局のホームページから超軽量動力機に関する多くの疑問を解消するのに必要な情報にたどり着くのは非常に困難です。地方航空局の担当者が個別の問い合わせに対応する余裕はないでしょうから、せめてホームページの一層の充実を期待したいですね。

似たような疑問やご意見をお持ちの超軽量動力機パイロットがいらっしゃるのではないかと思います。さまざまなコメントなどいただければ嬉しいです。

※ 「管制区」を示す図の入手方法

  • 国土交通省航空局が提供するサービス「AIS JAPAN」(英語のみ)にアクセスする。最初にアカウント登録が必要ですが、どなたでも登録できそうです。
  • ログインしたら「AIP」をクリックし、「Current」に「・」が付いている日付を選択する。
  • 「eAIP Japan」の「Part 2」の欄から「ENR 2 AIR TRAFFIC SERVICES AIRSPACE」「ENR 2.1 FIR, UIR, TMA」を選択する。
  • 下にスクロールしていくと「2 CONTROL AREA」が出てくる。さらに下へ進んだ最後に図のpdfファイル名が並んでいるので必要な図を保存する。

※ AIP(航空路誌)とは、国が発行する出版物で航空機の運航のために必要な恒久的情報を収録したもの(…航空局資料による説明)

※ eAIP(電子航空路誌

コメント

  1. T. Shimizu より:

    いつも興味深く拝見しています。大変勉強になります。今後とも情報大いに期待しています!

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